下肢が鍛えられ、脳の活性化にもなり、達成感がこころの健康に


「歳いっても転ばないらしいよ」とか「ゆっくりした動きでカラダにいいそうよ」とか言われる
太極拳ですが、何故転ばないようになるのか、ゆっくりした動作が何故からだに効くのか、
従来、イメージや結果(事例)で語られることが多く、なかなかピンと来ないと思います。

ここでは、改めて、スポーツ運動学や医学的な観点から見た太極拳の魅力に迫ってみようと、
以下に整理しました。 是非、ご一読ください。
 


何故、転びにくくなるのか

転ぶ原因として、主に、
1)下肢の筋肉が衰えてくる
2)バランスを取る能力が落ちてくる
3)つまづきやすくなる
が考えられます。


同じく、下肢の筋肉が衰えないように運動する、ウォーキングと比べてみることします。

ウォーキングはある程度の速さになればなるほど、勢いで動くことになります。
片方の足を前に出すとき、支えるもう一方の足に負荷がかかる時間は僅かです。

太極拳の歩き方は、もう片方の足が支えている時間がかなり長く、勢いを使わずにゆっくり動くため、
片足の重さは天秤のように、もう一方のお尻の脇の筋肉(中臀筋、大腿筋膜脹筋)の負荷となります。

これらの筋肉は、高齢となっても必要な筋力は、運動により維持できる種類のものです。
また、強化されると骨盤が安定して、全身のバランスを取る能力も向上します。
高齢の方が幼児のようにヨチヨチ歩きになってしまうのは、この筋力や能力が低下するからです。

ウォーキングに比べ、より効率良く、下肢の筋肉が鍛えられることが、お分かり頂けたでしょうか。

明確な根拠はないのですが、理論研究されている方々の感触で、
3倍ぐらいの効率ではないかと言われています。
これは、60分間ウォーキングして得られる効果を、20分間太極拳をやって得られることになり、
なかなか歩く時間の取れない方でも実践しやすくなると思います。


また、ヨガやピラティスと比べてどうか、とのご質問を頂いたこともありますが、
太極拳は、ヨガやピラティス以上に「動きのある」(からだの体重移動がある)
バランス運動だと思います。
動きのある中で使うことになる、身体の機能や筋肉も、強化されることになります。


さて、つまづかないためには、すねの筋肉(前脛骨筋)を強くするのが有効です。
この筋肉は、歩くときにつま先と地面の間隔を保ってくれる役割を持ち、
衰えるとちょっとした段差でつまづきやすくなります。
太極拳では、つま先を上げる動作があります。特に初心者の頃には意識して行います。
普段の生活や他のスポーツでは、ほとんど無い動作と思います。
太極拳を続けるだけで、つまづかないための筋肉も無意識に鍛えられることになります。
 


下肢の関節に優しく鍛えられます

ウォーキング以上に、運動負荷を上げたり、脂肪を燃焼させようと、
ジョギングやジム等のランニングマシンで走る方もいらっしゃいます。
しかし、飛び跳ねて着地からくる衝撃や、走るフォームに歪みがあった場合など、
下肢の関節(股関節、膝関節、足関節)を痛める可能性があります。

太極拳の動作は、下肢の関節の柔軟さを保つ運動とも言えます。
骨や関節への衝撃は無く、負担を減らして関節の機能も高めるために、
結果として、関節の痛み軽減や解消につながります。

太極拳の練習では、特に膝を痛めないような動きに意識を持ちます。

膝よりつま先を前に出さない歩型を取る、身体の移動を前足の膝で引き寄せない、ことで、
膝に負担をかけず、大腿四頭筋よりも、ハムストリングスや大殿筋の方を鍛えることになります。
また、膝を曲げた時、内側に入るという動作が、膝のお皿、靭帯、筋肉、骨に負担が掛かり、
膝を痛めやすくなります。
他のスポーツでジャンプ力などのパフォーマンスを発揮しないといけないときに、
つま先と膝の曲がる方向がずれると大きなロスにもなります。

太極拳はゆっくりした動きであるからこそ、練習(トレーニング)中に意識しながら改善しやすく、
膝を痛めないような動作を、頭から身体で覚えることがやりやすい運動と言えます。
 


下肢の骨にも好影響が

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にならないようにするには、骨量を増やすことが大事です。
骨量を増やすには、骨に垂直の荷重を掛けることが有効です。
スポーツ選手の場合はスクワットで、この垂直荷重も掛けていることになります。

太極拳の場合は、直立よりやや低い姿勢を維持した、ゆっくりとした動作なので、
片足ずつ交互にスクワットを無理のない運動負荷で行っていることに相当します。

カルシウムなどの栄養を摂ることと、適度な骨への垂直負荷運動を行うことが、
骨密度を増加させて、骨粗鬆症の防止になると思います。
 


血圧が下がるのに、全身の血行が良くなり、内臓が動いて便秘も解消

ウォーキング以上に、運動負荷を上げたり、脂肪を燃焼させようと、
ジョギングやジム等のランニングマシンで走る方もいらっしゃいます。
しかし、飛び跳ねて着地からくる衝撃や、走るフォームに歪みがあった場合など、
下肢の関節(股関節、膝関節、足関節)を痛める可能性があります。

太極拳の動作は、下肢の関節の柔軟さを保つ運動とも言えます。
骨や関節への衝撃は無く、負担を減らして関節の機能も高めるために、
結果として、関節の痛み軽減や解消につながります。

太極拳の練習では、特に膝を痛めないような動きに意識を持ちます。

膝よりつま先を前に出さない歩型を取る、身体の移動を前足の膝で引き寄せない、ことで、
膝に負担をかけず、大腿四頭筋よりも、ハムストリングスや大殿筋の方を鍛えることになります。
また、膝を曲げた時、内側に入るという動作が、膝のお皿、靭帯、筋肉、骨に負担が掛かり、
膝を痛めやすくなります。
他のスポーツでジャンプ力などのパフォーマンスを発揮しないといけないときに、
つま先と膝の曲がる方向がずれると大きなロスにもなります。

太極拳はゆっくりした動きであるからこそ、練習(トレーニング)中に意識しながら改善しやすく、
膝を痛めないような動作を、頭から身体で覚えることがやりやすい運動と言えます。
 


脳の活性化にもなる意識を用いる運動

太極拳は、一挙手一投足毎に考えながら、ゆっくり動くので、認知症の予防にもなると言われています。

太極拳の動作の基本の教えの一つに「用意不用力」があります。
用意(意識を用いる)で動き、用力(力や勢いだけで動く)ことはしない、という意味です。

何も考えず気持ちよく動くのは、脳を使わないことになります。
普段歩くとき、ほとんど無意識の動作ですよね。

筋肉を使う指令を出すのも脳の仕事ですので、座って頭を使っているとき(デスクワーク)は
脳の一部しか使っていないことになります。
ゆっくりと意識動作ができる太極拳は、脳への刺激が連続して、脳全体を活性化できます。


太極拳の歩く動作には、前進、後退、横歩きがあります。
実は、脳にとっても、下肢の筋肉強化でも、一番良いのは、後退の動きです。
24式太極拳では勿論、入門太極拳にもある動作ですが、
「倒巻肱」(ダオジェンゴン)が一番、効果があると思います。
片足の滞空時間が他の動作より長い分、もう片方の足に負荷がかかります。
後ろは見えないので視覚に頼れない分、足の裏の触覚や体重移動をゆっくりさせることに、
意識を行き渡らせることになります。
 


最後に

普段から不調な処や、今後に向けて鍛えておきたい処など、思い当たる点はなかったでしょうか。

通常の健康体操では感じにくい、学ぶ(習熟する)楽しさや、
だんだんと身体が改善されてくる実感が湧いてくることも、続けられる魅力です。

太極拳を通じて、皆様のこころとからだの健康づくりのお手伝いができれば、と思っております。
 


※ 旧「太極ライフ松本」サイトでは多く読まれたページですので、一旦、原文のまま転載しました